社会に役立つ研究がしたい。
異業界の電池分野からの転職。

学生時代から電池関連の研究に携わり、博士号取得後は実用化に向けた開発に従事。前職では、国内の大手家電メーカーで勤務していました。その会社では、ある材料を使った二次電池について研究開発を行っていましたが、世界的にプレーヤーが少ない領域であったため、研究の成果が世界初の実績となることがほとんど。新しい知見が次々と得られる面白みはありましたが、具体的な用途や目標が不明瞭であり、本当に社会の役に立つのだろうかという不安も徐々に募っていったんです。そんな時に社内のマネジメント体制が変わったことで、転職を決意しました。

その当時から興味を持っていたのが、いま携わっている『全固体電池』。日産に応募をしたのは、まさにこの全固体電池の研究に取り組んでいると知ったためです。自動車業界は未経験でしたが、これまでの研究の経験や知見を活かせそうだと考えまして。また、前職の環境とは違って、開発を行う目的や目標が非常に明確です。日産であれば、モチベーションを維持したまま働けそうだと思いました。

見据えるのは、長期ビジョンのさらに先。
次世代全固体電池の実現へ。

日産は長期ビジョン『Nissan Ambition 2030』にて、2028年度に、自社開発の全固体電池を搭載したEVを市場に投入することを目標に掲げています。私が携わっているのはさらにその先、2028年以降を見据えた全固体電池の研究開発。具体的には、低コスト・高エネルギー密度を両立する次世代全固体電池への適用を目指した材料・セル評価です。現在は大学や他の材料サプライヤーなどと相談しながら、低コストを実現する材料のスクリーニングを行っている段階ですが、目標を達成できるような材料の選定・調達は決して容易くありません。

一方で、日産が他社に先駆けてEVを市場に出してきた経験値は大きなアドバンテージです。自動車の場合、バッテリーだけでなく、クルマに積んだ際にバッテリーを守るためのモジュールまで含めたアプローチが必要になりますが、こうした点も責任を持ってクルマをつくってきた日産の強みが活きるなと。このような、当社独自の特長を駆使しながら試行錯誤をしています。

“電池の最終形態”―
自動車というフィールドの魅力。

私自身は、自動車そのものに強い興味があったわけではありません。ですが、電池の研究をしてきた身として、コスト、性能、安全性など、すべてが高い水準で求められる自動車は、“電池の最終形態”として注目をしていました。特に安全性に関しては、要求レベルが他の家電製品とは一線を画するレベルです。外装や安全性の基準については勉強中ですが、いままでになかった考え方も学べています。

また、他部署との関わりが増えたのも日産に転職してからの変化です。社内外のいろいろな人たちと一緒に仕事をするため、刺激を受ける機会が増えましたね。前職では実験からセルの組み込み、評価まですべて自分で行っていましたが、日産では、実験や評価は別の部署で行うんです。転職して、いまはより“考える仕事”に集中するようになっています。ちなみに、全固体電池の研究は日本が主導していますが、海外のリージョンでも研究に取り組んでおり、時として思いも寄らない結果がシェアされることがあるのも日産ならではです。

未知の課題が待ち受ける先物技術。
その真の価値を見極めたい。

次世代全固体電池の研究は先物技術であり、現在は候補になる材料をひたすらスクリーニングしてセルに詰めている段階です。ラボスケールで良い性能の材料が見つかっても、自動車に積み込むサイズにした時にどのような課題が出てくるかは未知数。広い視野を持ちながら、その真の価値を見極めていきたいと考えています。世の中には私のように、異業界で電池の研究開発に関わっている人もいると思いますが、多種多様な知見を持った方が集まってくれれば、全固体電池の開発は加速するはず。ぜひ、日産で経験を活かしていただきたいですね。

いまの業務自体が将来を見据えたものではありますが、より長期的な視点に立てば、今後もっと有望な技術が出てくる可能性があります。新しい技術もキャッチアップし、そうした進化を自ら提案・先導できる技術者になりたいですね。最近では、自動車に関わるサービスの将来性にも興味が出てきたため、常にフレッシュな情報に触れながら、研究のモチベーションを高く維持し続けたいと思います。