「自動車のすべてを理解したい」
自動車部品設計から性能計画へ。

韓国の大学を卒業した後、日本の派遣会社に入社。完成車メーカーの研究所で勤務し、ハーネス設計を担当していました。ハーネスは、自動車内部のいたるところに張り巡らせることで、電子部品や電装品を電気的に接続し、情報や電力の伝送を中継する役割を持っています。その経路設計や設計業務の効率を上げるための図面品質向上などに取り組んだほか、サプライヤーへの新規委託プロジェクトにも参加。技術内容の教育や正式運用に向けた準備などを行っていました。

働いていくうちに、自動車の一部ではなく全体を理解できるようになりたいと感じたことや、大学で専攻した安全工学の知識を活かし、安全に関わるものづくりをしたいと考えるようになったことで転職を考えるように。また、当時の勤務先は東京から離れており、周囲に知り合いも少なく、生活するうえで寂しい思いをすることも多くありました。完成車メーカーの中でも、友達が多く、海外出身でも生活しやすい首都圏で働くことができる日産自動車が一番の選択肢になりました。

グローバル人材が集う日産で
協力してクルマをつくり上げる魅力。

日産テクニカルセンターに勤務するようになって驚いたのは、海外出身の方が働きやすい環境が整っていて、文化的なダイバーシティを受け入れる風土があったことです。同じ韓国出身の知り合いが勤めていたこともあって事前に話を聞いてはいましたが、グローバルなメンバーがそろい、会議資料や会話も英語が使われるなど想像以上でした。日本が好きで働き続けたいという想いで入社したので、同じ境遇や出身の方が多いことがうれしかったですね。

実は、前職で働くまではクルマそのものにあまり興味はなかったんです。けれど、多くの部品が集まって完成する自動車を、いくつもの部署のメンバーが集まり、作り上げていくという面白さにどんどんはまっていきました。クルマは日常生活で簡単に接することができて、自分が働いた成果がすぐ目に見えることもポイントですね。また、特に日本の自動車産業は世界的に見ても経済的波及効果が大きく、持続的な先端技術の開発と成長が実現できる点も魅力を感じています。

事故のないクルマ社会の実現へ
経験を活かし歩行者保護に取り組む。

衝突安全グループはお客様の安全を第一と考え、人・クルマ・社会の観点から安全対策を進め、事故のない安心できるクルマ社会の実現を目指しています。現在私が担当しているのは、車両の衝突安全に関する歩行者保護性能開発です。衝突時の歩行者の頭部、大腿部、脚部などの傷害値を最小化できる構造及び技術を検討し、さまざまな部品のコンポーネントへ性能割付を実施しています。衝突シミュレーションや実験を経て作りこみを行っています。

学生時代に学んだ安全性能の知見に加えて、前職で得た自動車開発のプロセスや用語、部品名称などの知識があるため、仕事には慣れやすかったと感じています。設計業務の経験があるからこそ、性能目標を満足させるための部品への割付を設計の立場で考えることができ、効率の良い仕事につながっています。

デザイン・設計と協力し、
もっと安全で、かっこいいクルマを。

歩行者の安全を追求する今の業務は、各部署が開発・製造する多様なコンポーネントへ性能割付を実施し、開発目標を達成していく仕事です。そのため、自動車の全般的な知識と高いコミュニケーション能力が重要だと感じています。まさに転職前に望んでいた、自動車全体の知識が求められるポジションと言えます。ハーネス設計の仕事も楽しかったので、また携わりたいと思うこともあるのですが、やはり今の仕事が気に入っています。

歩行者保護は自動車のデザインに大きな影響を与える性能でもあります。そして、ほとんどの場合、歩行者保護性能とデザインの両立が開発の難しいところです。設計部門にも協力をしてもらいながら歩行者保護性能を実現しています。だからこそ、今後の目標は歩行者保護とデザインの設計自由度が高い車を開発するための技術を開発すること。これまでの知識と経験を活かしながら、安全で、よりかっこいいクルマづくりをしていきたいですね。